X370マザーボードでRyzen 3700Xをレビュー&2700(無印)と比較
この度、Ryzen 2700(無印)から3700Xへの換装を実施しました。
ただ、現在使用しているASRockのX370 Mini-ITXマザーボード「Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac」ですが、このマザーボードでRyzen 3700Xの性能がどこまで出せるのか検証を実施しました。
BIOSは2019/8/31時点で最新の5.90を使用しています。
X570チップセット搭載のMini-ITXマザーボードが選択肢が少なく価格も高い為、現時点では購入を考えていません。
結果(通常設定のCINEBENCH R20)ではX570マザーボードと比較して5%ほどのスコア低下が見られました。
第2世代Ryzenで同じくTDP 65Wの2700(無印)からどれぐらい性能が上昇しているのかも一緒に比較して検証していきます。
ただし、この検証はケースに入れた状態での評価であるため参考まで、という程度で読んでいただけると助かります。
目次
評価環境
まずは検証する上での評価環境(スペック)になります。
ケースは約10LのMini-ITXスリムケースを使用しており、CPUクーラーもロープロファイルに限られるためCPUを充分に冷やせる環境とは言えませんが、実運用する上での評価、検証という見方をしていただければ幸いです。
ケース | Fractal Design Node 202 |
マザーボード | ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac |
CPU | Ryzen 3700X / Ryzen 2700(無印) |
グラボ | MSI RX580 Armor Mk2 (ファンをnoctua NF-A12x25PWMに交換) |
メモリ | Corsair CMR16GX4M2C3600C18 8GB x 2 (3200Mhz運用) |
CPUクーラー | ID Cooling IS-30 (ファンはNoctuaのNF-A9 PWM 92 x 25mmに交換) |
PSU | Silver Stone SST-SX600-G V2 |
SSD | WD 2.5” Blue 500GB + WD M.2 Blue 500GB(SATA) |
HDD | 東芝 2.5” MQ04ABD200 2TB |
ケースファン① | 吸気用 noctua NF-A12x15 PWM(マグネット貼付け) |
ケースファン② | 排気用 noctua NF-A4x20 PWM(マグネット貼付け) 2個 |
AM4チップセット比較
検証開始前に、AM4チップセットの比較をしていきます。
X370と最新のX570の違いを見るとX570から対応のPCIe Gen4は当然未対応。
その他、Precision Boost Overdrive(PBO)とXFR Enhancedに非対応となっているところが大きな違いでしょうか。
ただ、今回3700Xを搭載してAMD製OCツール「AMD Ryzen Master」を使用してみたところ、PBOが有効にできているようです。(後述)
AMD側が対応したということでしょうか(?)
X570 | X470 | B450 | X370 | B350 | A320 | |
---|---|---|---|---|---|---|
OC | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | - |
対応 メモリ | 4スロ 128GB | 4スロ 64GB |
||||
メモリOC | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
SLI | 〇 | 〇 | - | 〇 | - | - |
CrossFireX | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | - |
StoreMI | 〇 | 〇 | 〇 | - | - | - |
XFR2 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
XFR2 Enhanced | 〇 | 〇 | 〇 | - | - | - |
PBO | 〇 | 〇 | 〇 | - | - | - |
PCIe Gen4 | 〇 | - | - | - | - | - |
PCIe レーン | Gen4 x 8 | Gen2 x 8 | ||||
USB 3.1 Gen2 | 8 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 |
USB 3.1 Gen1 | 0 | 6 | 2 | 6 | 2 | 2 |
USB 2.0 | 4 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 |
SATA 3 | 12 | 4 | 2 | 4 | 2 | 2 |
SATA Express | 0 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 |
RAID (SATA) | 0/1/10 | 0/1/10 | 0/1/10 | 0/1/10 | 0/1/10 | 0/1/10 |
RAID (NVMe) | 0/1/10 | 0/1/10 | 0/1/10 | 0/1/10 | 0/1/10 | - |
ちなみに、最安価のA320チップセットでも出荷時点で第3世代Ryzen対応済みMini-ITXマザーボードがASUSより発売されています。→参考ページ
事前確認
検証を開始する前に基本情報としてのRyzen 3700Xの消費電力やクロック、温度を確認してい行きます。
デフォルト状態では消費電力約90Wとして動作するため、温度が高めになっています。
Ryzen 2700(無印)の動作
まずは前世代Ryzen 2700の動作を確認します。
「AMD Ryzen Master」で確認すると、あまり設定を変更できるところはありません。
PPT:87 TDC:60 EDC:90として設定されている?
「Precision Boost Overdrive」の項目はグレーアウトしており、設定できない状態。特にOCをするつもりもなかったためデフォルトの状態で使用していました。
そして、デフォルト状態で「CINEBENC R20」を実行した時のCPU温度と消費電力は以下のようになっていました。
Ryzen 2700もTDP 65WのCPUですが、実際には80Wまで上昇し、温度は約75度まで上昇。
「AMD Ryzen Master」での設定値PPT:87Wまでは上昇していませんが今回の検証では特に追求しません。
クロックについては測定していません。
デフォルト設定だと結構熱い3700X
次に、同じように「CINEBENCH R20」を使用し、Ryzen 3700Xで測定してCPU温度と消費電力を測定していきますが、デフォルト設定の状態では消費電力が90W、温度は87度まで上昇しました。
この状態でOCCTを実行したところ、CPU温度が90℃を超えて停止するという状況に至ったため、デフォルトで使用するのは断念。
TDPを下げるように「AMD Ryzen Master」で設定できないか挑戦してみました。
なぜか使えるPrecision Boost Overdrive
Ryzen 3700Xを搭載し、「AMD Ryzen Master」を再インストールしたところ、なぜか「Precision Boost Overdrive」の項目がグレーアウトしておらず、有効にできそう。
本来、X370チップセットでは対応していないのでは・・・?
試しにこの状態の設定PPT:235 TDC:150 EDC:180で「CINEBENCH R20」を動作させたところ、CPU温度が95℃、消費電力118Wという危ない状態まで行ってしまいました。
とりあえず、「Precision Boost Overdrive」は有効になっていそうです。
充分にCPUを冷やせる環境であれば、このPBOデフォルト状態で高いパフォーマンスを発揮できるのではないでしょうか。
ただ、TDP 65Wに魅かれて購入した場合には想定外の動作になってしまいます。
*補足
「Precision Boost Overdrive(PBO)」の機能について簡単に説明すると、チップセット比較の項目でもあったPBOとXFRが連携して、CPUが十分に冷えている状態であれば設定値まで自動オーバークロックするという機能となっています。
設定項目のPPTは消費電力(W)の設定値、TDCとEDCは電流(A)に関する設定値のようですが、基本的に消費電力PPTで制御すれば良さそうです。
消費電力(W)= 電圧(V) x 電流(A)であるため、どちらか一方が急上昇するという現象には基本的には達しないであろうと推測しています。
今回のPBOデフォルト設定でいえば、PPTが235Wと設定されており「CINEBENCH R20」開始直後に消費電力118Wまで上昇しましたが、CPU側に制限があるのか、それ以上は上昇しませんでした。
基本的には、TDP 65Wの「Ryzen 3700X」でもPPTの値まで消費電力を上昇させて、自動オーバークロックが行われます。
PBOデフォルト使用はCPU温度が上昇しすぎて危険場合があります。気を付けましょう。
BIOS(UEFI)でも「Precision Boost Overdrive」の項目が追加されていました。
X付きのCPUでは対応済みかも?
PPT毎の消費電力、温度、クロック比較
なぜか「Precision Boost Overdrive」が使用でき、PPTで消費電力がコントロール可能=低温化ができることが判明したため、今度はこの機能を使用してRyzen 2700と同等の温度(目標75℃)まで下げるにはどこまでPPTを下げればよいのか検証しました。
設定方法
①Profile 1 か Profile 2を選択②Precision Boost Overdriveを選択
③PPTを入力
④Applyで適用
まずは、Ryzen 2700と同等の設定PPT:87 TDC:60 EDC:90で「CINEBENCH R20」を実施すると以下のようになり、最大温度84℃、消費電力は89Wとなりました。
あとはここからPPTのみを下げていき、CPU温度が75℃近くまで下がるところを狙っていきます。
本検証では各PPT設定値での消費電力、CPU温度、CPUクロックと「CINEBENCH R20」のスコア(マルチのみ)を確認していきます。
CPU温度は最大値を参考、CPUクロックはCore#0のクロックを測定し、消費電力が上昇しきった時の値を参考にします。
以下が、各PPTでの測定値です。
Defaultが「AMD Ryzen Master」でのデフォルト設定
PBO Defaultが「Precision Boost Overdrive」のデフォルト設定
消費電力
概ねPPT設定値+1.5℃~2℃ぐらいに収まっています。
温度
PPTを下げる分やはり温度が低下しており、PPT75設定で約77℃、PPT70設定で約73.5℃まで下がりました。
CPUクロック
こちらもPPTを下げる分クロックが下がります。
PPT65(3593.5)と87(3818.8)を比較すると6~7%ほど差が出ています。
また、PPT65設定にした時に「Ryzen 3700X」公称スペックのベースクロック3.6GHzとほぼ同等の値になっているのが分かります。
ちなみに、最大ブーストクロックは4.4GHzです。
CINEBENCH R20スコア
同じくスコアに差がでています。
PPT65(4269)と87(4547)を比較すると6~7%ほど差が出ています。
最大スコアがPBO Defaultの4665となっていますが、他のサイトなどを参照するとDefault設定で最大で4750越えのスコアがでているところもあるようです。
本環境でのDefaultの場合スコアが4523であるため、約5%ほどの差があります。
やはりX370チップセットで本領を発揮できていないのかもしれません。
消費電力をRyzen 2700に合わせる
ここまでの検証により、Ryzen 2700の動作温度に合わせるにはPPT70~75ぐらいがちょうど合いそうだということが分かりました。
(それぞれの環境によって異なりますので、ご参考まで。)
今回はPPT70設定でこの後のベンチマークを実施します。
各種ベンチマーク
前置きの方が長くなってしまいました。
ここからが本番です。
各種ベンチマークを実施、Ryzen 2700と比較してていきますがそこまで項目は多くありません。
PPTは70の設定で測定しています。
CINEBENCH R20
まずはCPUベンチマークの定番「CINEBENCH R20」です。
【Ryzen 2700】
マルチ:3320 シングル:388
【Ryzen 3700X】
マルチ:4300 シングル:490
マルチは2700から30%上昇、シングルは26%上昇しました。
PCMark 10
次に総合ベンチマークソフト 「PCMark 10」のスコアです。
【Ryzen 2700】
総合スコア:5329
【Ryzen 3700X】
総合スコア:6591
2700から23%上昇しました。
↓詳細スコアは画像参照ください。
動画エンコード(x264)
続いて、第2世代Ryzenは苦手とされてきた動画エンコードのエンコードにかかる時間を測定しました。
動画サイズは406MBで、エンコーダは「Aviutl」を使用。
まずはx264出力時のエンコードにかかった時間を測定します。
時間が短い方が良い結果となります。
【Ryzen 2700】
エンコード時間:45.8秒 フレーム:82.44fps
【Ryzen 3700X】
エンコード時間:36.2秒 フレーム:104.84fps
2700からエンコード時間が20%減少しました。
動画エンコード(x265)
次にx265出力時のエンコードにかかった時間を測定。
【Ryzen 2700】
エンコード時間:92.1秒 フレーム:39.23fps
【Ryzen 3700X】
エンコード時間:62.7秒 フレーム:58.08fps
2700からエンコード時間が32%減少しました。
x265出力は特に苦手とされてきたものが改善され、32%もの減少が確認できました。
3D Mark Time Spy
ここからは3Dベンチマークソフトやゲームのベンチマークソフトを使用して検証していきます。
まずはDirectX 12対応「3D Mark Time Spy」です。
【Ryzen 2700】
総合スコア:4659 CPUスコア:7400
【Ryzen 3700X】
総合スコア:4744 CPUスコア:9207
2700と比較して総合スコアは2%上昇、CPUスコアは24%上昇しました。
3DベンチマークであるためGPUが重要であり、CPUは総合スコアに対してはほとんど寄与していません。
予想通りではあります。
CPUスコアは「CINEBENCH R20」や「PCMark 10」と同じような上昇率になっています。
3D Mark Fire Strike
続いてDirectX 11対応「3D Mark Fire Strike」です。
【Ryzen 2700】
総合スコア:12518 Physicsスコア:17978
【Ryzen 3700X】
総合スコア:12866 Physicsスコア:22631
2700と比較して総合スコアは2%上昇、Physicsスコアは26%上昇。
Time Spyとほぼ同等の結果となりました。
FF14ベンチマーク
PCゲームのベンチマークを実行していきます。
まずはFF14ベンチマークを実行。
【Ryzen 2700】
スコア:10437
【Ryzen 3700X】
スコア:10775
2700から3%上昇しましたが、ゲーム系ベンチマークの場合これぐらいはばらつくような気もします。
FF15ベンチマーク
続いてFF15ベンチマークを実行。
【Ryzen 2700】
スコア:4305
【Ryzen 3700X】
スコア:4240
2700から1.5%減少しました。これもスコアがばらつくためかと思います。
FF14とFF15には3700XとグラボRX580ではスコア上昇に影響はないようです。
War Thunderベンチマーク
最後に私がメインでプレイしている「War Thunder」のベンチマークを実行。
こちらも影響はないだろうと思いきや、予想外の結果でした。
【Ryzen 2700】
スコア:8352 平均FPS:137.0 最小FPS:123.7
【Ryzen 3700X】
スコア:11267 平均FPS:180.0 最小FPS:152.7
2700からスコアが32%上昇、平均FPSが32%上昇、最小FPSが23%上昇。
正直なところ、「なぜ??」という印象なのですがスコアが大幅に上昇、FPSも改善されています。
「War Thunder」はシミュレータと呼ばれることもあるぐらいのゲームであるため、CPUへの依存度が高いのでしょうか。
2700 3700X
実際に3700Xで「War Thunder」をプレイすると、画面が重い時は144Hzを割ることがありますが、以前よりFPSが上がったように思えます。
まとめ
以上で検証を終了します。
X370マザーボードを使用した「Ryzen 3700X」の検証でしたが、X370マザーボード特有のクセなどは特にないように思えます。
X570マザーボードと比較した場合には「CINEBENCH R20」のスコアが低くなったりするということは予想されますが、常用する上では大きな差は無いのではないでしょうか。
個人的に想定外でしたが嬉しいポイントとしては「War Thunder」が改善されたところですね。
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